婦人科の診察

ところで産婦人科ではどのような診察が行われるのでしょうか。産婦人科というとやはり敷居が高いというか行きたくないというか恥ずかしいという方が多いと思います。診察の内容を知って心の準備をしましょう。

問診

問診票

問診票

病院へ行けばまず最初に受付で来院の理由を言うと思いますが、その症状に対していくつかの質問をすることを問診と言います。多くの場合問診で診察の半分が終わります。後は医者が自分の中で組み立てた診察の流れに従ってその推測が当たっているかどうかを確認していく作業になります。推測通りならスムーズに診察が進みますが、全然違うということもあります。そういう場合はうーんとうなりながら考え考え診察を進めますのでちょっと時間がかかります。問診であまり先入観を持つとそれ以外の重大な所見(診療に有用な情報のことです)を見逃すことがあるので、推測しつつもできるだけ漏れのないように診察していきます。そういう点では婦人科は見る範囲が比較的狭いので診察はしやすい部類だと思います。内科などは頭から足先や内臓までいろいろ考えることがあるでしょうから大変ですね。

内診

これは婦人科独自の診察で、最も皆さんが嫌がるIMG_3064診察だと思います。婦人科の最初の関門ですね。内診台という診察台に乗ってもらいます。最近の内診台はだいたい座れば機械が動いて寝た形になり足が広がるようにできています。当然腟の中の診察ですからズボンやパンツは脱がなくてはなりません、タオルを用意していますが、これを腰に巻き付けて内診台に座られると足が開きませんし、診察の邪魔です、タオルは内診台に座ったら前にちょっと載せる程度にして下さい。おなかの上にカーテンがかかります、普通はしめますが外国人の方にはカーテンは開けてほしいという方もおられます。

内診は双合診とも言います、片方の手指で腟内から、もう片方の手でおなかの上から押さえます、そうして子宮の形や大きさや向き、押したりして動きが良いかその時に痛みがあるかなどを見ます。最も基本的な診察です。特に産科では内診は子宮の状態や、お産の時の胎児の頭の位置や状態を見るにはどうしても必要で、内診であとどれくらいで生まれそうということまで(ある程度)わかるようにならないとお産はできません。診察時はプラスチックのパウダーフリー手袋を使っていますのでゴムアレルギーの人でも大丈夫です。

腟鏡診IMG_3082

腟鏡という器具を使います、鳥のくちばし(の大きなもの)のようなものを腟内入れて、それを開くと腟内が見えます、おりものや出血の状態、子宮の出口の状態などを見ます。必要があれば、子宮頚癌検診やおりものの採取、洗浄などを行います。

直腸診

そのままですね、肛門から指を入れて診察します。ふつうはゼリーを指に塗ってから入れます。何を見るのかというと、子宮の裏側に癒着性の病変がないかを見ることが多いです、高度な診察になれば子宮頚癌の進展状態を見たりします。また子宮内膜症の有無などもある程度わかります。

経腟超音波(エコー)検査エコー2

婦人科のメインの検査と言ってよいでしょう。腟にプローブという棒状のものを入れます。(このときプローブには普通のコンドームをかぶせます、これがゴム製なのでゴムアレルギーがあると後でかゆくなったりしますので、ゴムアレルギーの方は最初に教えて下さい。)この検査で子宮の形や向き、大きさ、内膜の厚さ、子宮筋腫の有無、卵巣の状態、腹水がないかどうかなどがかなりの精度でわかります。妊娠の場合は胎嚢(GSという gestational sac)が妊娠5週くらいからわかります。昔経腹エコー(おなかの上から見るエコー)しかなかったころには、胎嚢は2-3㎝にならないとわからなかったので子宮外妊娠を診察するのが極めて困難でした。今は妊娠反応がそこそこ強くて胎嚢が子宮内に見えなければ強く子宮外妊娠を疑います。場合によっては卵管に妊娠している胎嚢が見えることもあります。

写真は当院の内診室の裏のエコーと電子カルテの画面です(その右にあるのはコルポスコープと言って子宮頚癌検診で精密検査をするときに使う機械です)。エコーを見ながら前回のエコー所見を見れるので電子カルテにしてからとても便利になりました。

経腟エコーは膀胱におしっこがあまり溜まっていると見づらくなりますが、おなかの上から見る経腹エコーは膀胱におしっこが溜まっていないとほとんど何も見えません。ですからおしっこを出してしまってよいかどうかを受付で聞いていただくと助かります。特に中学生や高校生の場合はほとんどが経腹エコーになりますから、おしっこを出してしまうとなーんにも見えなくなります。

経腟エコーの機械が普及しだしたのがちょうど僕が婦人科に入局したころでした(30年前・・なんと)。その頃は年配の先生は経腟エコーは使ってなくて、内診のみでほとんどを診察していました、若手の医師だけが経腟エコーを見ていたので、先輩の診察の間違いを新入医局員がエコーを見て指摘するなどという下剋上のような状態がしばらく続きました。そのうち年配の先生も経腟エコーを見るようになりましたが、それでも年配の先生は若手に「お前たちは電気がなければ診察できなくなるぞ!!」などと言ってましたが、今はどんなに山奥でも離島でも、エコーがないということはおそらくないと思います。確かに少なくとも僕はエコーがなければ何も診察できません。年配の先生は妊婦のおなかを触れば(レオポルドの診察法)胎児の頭がどちら向きで、背中がどこで足がどこでがちゃんとわかるそうですが、僕がそれをやると尻と頭をだいたい間違えます。しかしエコーを見れば頭の向きどころか心臓に奇形がないかどうかまでわかります。やはり新しい技術は取り入れる必要があると思いますね。かく言う僕ももう年配なので若手に置いて行かれないようにしなくてはいけないと思います。

経腹エコー

おなかの上から見るエコーです、内科などでは一般的です。産科である程度大きくなった胎児(妊娠12週くらいから)を見るときはだいたい経腹エコーです。婦人科ではとても大きな筋腫や卵巣腫瘍を見るときに使ったり、内診できない患者さん(子供や高校生くらいまでの方ですね)を見たりします。上でも書きましたが経腟エコーは膀胱におしっこが溜まっていると見づらくなるのですが(子宮の方向が変わってしまう)、経腹エコーはおしっこが溜まってないとほとんど見えません。子宮は膀胱の裏側にくっついているのでおしっこがあるほうが見やすいです。しかし経腟エコーに比べると全然見づらいです。ですから、若い人で(内診できない人で)どうしてお経腹エコーでは病変が見えない場合には、肛門から経直腸的にエコーを見ることがありますが、それはよほどの時です、ふつうはしませんので安心して下さい。

 

婦人科ノートに戻る  次は婦人科の症状