子宮体癌(検診)

子宮体癌子宮体癌とは子宮の奥のほうの体部にできる癌ですが、子宮内膜癌とも言います。内膜は妊娠するところです、そこに癌ができるのです。ホルモン依存性と考えられています。つまり卵巣から出るエストロゲンというホルモンに刺激を受けて癌になるということです、ただ卵巣からは排卵後にプロゲステロンという黄体ホルモンが出てきます、これはエストロゲンの発癌作用を打ち消す働きがあります、したがってふつうに生理がある場合は簡単には子宮体癌にはならないのです。

ただ昔からお産をしてない人や太った人に子宮体癌は多いと言われてきました。それはお産をしてなければ生理の回数が増え、それだけエストロゲンが分泌されているということのようです、太った人に多いというのは脂肪組織からエストロゲン類似物質が作られていることによるようです(詳しくは知りませんが、研修医のころからそういわれてきました)。ただし一般論でして、痩せていればならないということもないですし、お産が何回あってもなる人はなります。あくまでも一般論です。しかしリスクファクターにはなると思いますので、お産をされてない方やBMIが30を超える方は定期的に婦人科を受診されることをお勧めします。

子宮体癌になる前に子宮内膜増殖症という状態になることが多いようです。これは超音波検査で内膜を見ると厚くなっているので予測できます。ただ若い人では異常がなくても内膜が厚くなる人はいますので絶対ではありませんが、ある程度厚みがあればやはり子宮体癌検診は必要でしょう。

昔は日本では子宮体癌は少なかったのですが、最近は食生活などの変化のせいか増えてきています。欧米人に多いと言われていた乳がんや子宮体癌が日本人にも増えているのです(話は違いますが、アジアに多いと言われている妊娠中毒症は日本では最近目っきり減りました、やはり生活の欧米化が影響しているのでしょうか)。 

子宮体癌検診子宮体癌検診

子宮体癌検診は子宮の中の細胞を取るので検査自体が痛みを伴います。したがって簡単にやれる検査ではありません、少し気合が必要です。しかし不正出血がだらだらと続くような場合は必ず子宮体癌検診をしなくてはなりません。この時ちょっと用心しなくてはいけないのは妊娠可能年齢の方の場合、不正出血があるからと言ってむやみに体癌検診をすると妊娠初期のことがあるので、できれば妊娠検査をして陰性を確認してから体癌検診をしたがよいと思います。そこまでやっている先生は少ないかもしれません、レディースドックではオプションで子宮体癌検診が選べる場合もありますが、少なくとも生理が遅れてないことは確認すべきかなと思いますが、不正出血があるなら妊娠検査は必須です。

特に出血がないのであれば定期的に超音波で子宮内膜の厚みを調べておくのも良いです。閉経後に子宮内膜が1cm以上あるようなときは厚いと言えます。出血がなくても体癌検診をした方がよいです。子宮頚癌検診をちゃんと受けてその時エコーで内膜を見てもらえば頚部と体部の検診を受けたと考えてよいと思います。ただしさっきも書きましたが不正出血が続くときは内膜が薄くても体癌検診は必要です、まれに薄くても体癌になることはあるようです。

子宮体癌検診で異常があればどうするか

今度は内膜組織診というのが必要になります。これは痛いです。とり方はキュレット鉗子というものを子宮の中に入れて内膜をこさいでとるのですが、生身でとるのは結構痛いですね。でも麻酔をするほどでもないので、通常は生身です。

子宮鏡というファイバースコープ(胃カメラを小さくしたようなもの)を子宮に入れて、中を見てから怪しい部分を取るという方法もあります、そのほうがより確実に診断ができます。子宮鏡を見るときは子宮の中に生理食塩水を入れながら子宮を膨らませて観察しますが、このとき体癌があればその細胞が卵管から生理食塩水と一緒に押し出されておなかの中に出てしまうといけないので、細胞診異常があるときの子宮鏡では生理食塩水はそっと入れて、短時間で終わらせることになっています。やはり子宮鏡で見て組織を取ったほうがキュレット鉗子で無作為にとるよりは良いと思います。

内膜がある程度厚くなっている場合はキュレット鉗子より、小さな胎盤鉗子(平べったい鉗子)で内膜をつまんで取り出すほうがよいかもしれません、盲目的ですが内膜が厚ければ結構取れますし痛みもないです。

子宮体癌の手術

子宮体癌の組織形にはG1、G2、G3という3つの組織形があります。数字が多くなるほどよくない組織形です。G1の場合は高分化型腺癌と言って非常にふつうの内膜の腺組織と似ていて、あまり癌ぽくないようです。妊娠を希望される場合はホルモン剤でも治療できるようですが、妊娠を希望されない場合は子宮全摘がやはり標準の手術です。ほかに播種(はしゅ、癌の転移のような意味です)がなければほぼ100%治る癌です。
G2以上になるとなかなかそうもいかないようなので、これも細かいところは主治医の先生の説明を聞いて下さい。ただ子宮頚癌よりは進み方は遅いです。頚癌はリンパ節転移が非常に早い段階から起こりますが、体癌はリンパ節転移より子宮を突き破っておなかの中に直接広がっていく播種という形態をとることが多く、そのためにはそこそこ時間がかからないと子宮の筋層を突き破ることはないようです。ただリンパ節に転移しないことはないので詳しくは主治医の先生に聞いて下さい、やはりケースバイケースなので。

子宮体癌を疑うときの症状

婦人科医が体癌を強く疑うときの症状を書きます。閉経後に少量の出血があったりなかったりをずっと繰り返している(例えば数か月から半年)。というときです、これで太り気味の方でしたら、子宮体癌の可能性がきわめて高いと考えます。もちろんこういうときでも体癌じゃないことのほうが多いのですが、やはりそういう疑いを持つことはとても重要です。ちょっとした出血は心配ないと考えてしまいがちですが、実はちょっとした出血のほうが怖いのです。むしろ多量に出血しているときのほうが癌の可能性は低いです(もちろん末期になると多量に出血するのですが、その前に少量の出血が続く時期があります)。

 

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