電気の基本的な流れ方を勉強したので、次は実際の回路を感性で考えてみましょう。最初は増幅回路ですよね。真空管かトランジスタが一般的だと思いますが、真空管は高価で扱う電圧も高くてちょっと怖いので、素人が最初に手を出すには敷居が高いと思います。やっぱりトランジスタがなんといっても安いですし、場合によっては電池で動きますから、火を噴いたりすることもないので安全でやり直しも簡単でちょうどよいと思います。ただ考え方は真空管のほうがわかりやすいような気はします、少なくとも感性には訴えるものが真空管にはあります。そうはいっても電圧が高いというのは僕は今でも怖いです。理論は難しくてもトランジスタから始めましょう。
トランジスタの基礎とhFE
そもそもトランジスタとは何でしょうか。これは半導体を重ね合わせたものです。半導体とは何でしょうか?その名のとおり半分導体です(そのまま)、導体とは電気を流すものです、多くの金属は電気を流す導体です。半導体はそのままではあまり電気を流さないものです。よく引き合いに出されるのが鉱石ラジオです。昔そういうラジオがあったらしいです(さすがに僕も古い人間ですが鉱石ラジオは知りません、小学校の時「科学と学習」という雑誌があってそれに付録でついていたような気がしますが・・・)。鉱石ですから石です、それに針のようなものををニクロム線(懐かしい 子供のころのおもちゃにはよくニクロム線が使ってありました)につないで、その針で石をあちこち触っているとアンテナから入った電波を半波整流(半端整流ではない)してそれをクリスタルイヤホンで聞くというゲルマラジオの原型のようなものがありまして、話せば長いことながらその鉱石がいわば半導体です。針のようなもので触れるとどっちからどっちに流れるのかは忘れましたが、片方にしか電流が流れないポイントがあるのです。誰がそんなことを見つけたのかは知りませんが、これが今のシリコンバレーのもとになっているのですね(シリコンが半導体の代表)。
というわけで(?)P型のシリコンは電子が何個か(1個?)足りません、N型は電子が余っています、P型とN型を貼り合わせてそこに電圧をかけるとP型からN型にしか電流が流れません(それがなぜかは聞いてはいけません、とにかく感性に従ってPからNに流れるとイメージして下さい)、電子の流れと電気の流れ(電流)が逆なのは中学で習いましたよね。P型とN型のシリコンをくっつけたものをダイオードと言いますが、これはPからNにしか電流が流れないので、整流作用というものがあります。トランジスタの場合はN型のシリコンを2枚を、中間に薄いP型のベースの層を挟みこんで貼り合わせます、これがNPN型(2SC1815など)のトランジスタの構造です。このときN型のコレクタに十分高い電圧をかけてエミッタをマイナス側につないだとします、しかしそのままではコレクタからエミッタには電流は流れません、しかしそこでベースに弱いプラスの電圧をかけます、コレクタ側は電圧が高いのでそちらには電流は流れませんが、エミッタ側にはベースから電流が流れます。するとなんと、コレクタから一気にエミッタに向かって電流が流れだすのです!!これを発見した人は偉かったですね。つまりコレクタからエミッタに流れる大きな電流をベースの弱い電圧で多く流したり少なく流したりとコントロールできるということが分かったのです。これがいわゆる増幅作用という、おそらく最初に感性に訴えて理解できる部分です(細かい理屈はやっぱりわからんですね)。
このときどれくらい増幅するのかという指標になるのがhFEというものです。実はこのhFEについては全く知らなくてもトランジスタ回路の設計はできます、しかしトランジスタの説明をするときにはどうしても必要になります。ただし簡単ですから読み流して下さい。hFEはトランジスタの本には最初に出てくるものでトランジスタの基本になる部分です。簡単に言えばベースに流れる電流の何倍の電流がコレクタに流れるかというトランジスタそれぞれに固有の数値でばらつきがあります。実際にはグレード分けされて売ってあります、Y(Yellow)グレードや、Gr(Green)グレード、B(Black)グレードなどです。Yグレードだと100-150倍くらい、Grなら150-400倍くらい、Bなら400倍以上だったりします(おそらく)。
これはトランジスタの基本性質なので、これがわからなければどれくらい増幅するかわからないじゃないか、となるとトランジスタそれぞれでできたアンプに増幅率の差が出るじゃないかという疑問がわきます。しかし後で説明しますが、実際の回路では入力信号を100倍とか400倍に増幅することはありません、せいぜい10倍くらいです。もちろんトータルで1000番位近く増幅するレコードのプリアンプというのもありますが、それでも一つのトランジスタで1000倍にするのではなく、10倍のトランジスタを3個使って10x10x10で1000倍にするという感じです。ですから実際の回路の増幅率はそれ以外のファクターで決まります。やろうと思えば最大hFE倍の増幅ができますよという指標と考えて下さい。
さてこの増幅作用が感性で理解できればあとはだいぶ楽になりますが、もう少し感性で理解する必要のあるところがあります。次に実際のトランジスターの増幅回路を見ながら、トランジスターの性質を勉強しましょう