負帰還回路の怪

負帰還回路を駆使しないと、これ以上のアンプは作れないと思います。負帰還とは出力の一部を反転させて入力側に戻して、回路全体を安定化させる技術と言えると思います。なくても暴れまわることはないと思いますが、あれば安定すると本には書いてあります、さらに周波数特性が良くなりノイズも減るということです。ノイズが減るのはわかりますが周波数特性が云々はよくわかりません。元が悪ければだめだろうと思うのですが・・・。少なくとも増幅回路で生じたノイズは反転されて入口に戻されれば増幅回路内でキャンセルされることになります。それと回路の設計が負帰還を使用すると今まで書いてきたのとはだいぶ違った雰囲気になってしまいます。というか今までのは基礎知識として必要という程度で、実は実際の回路ではほとんど使われることありません、結局は負帰還でアンプはコントロールされてしまうような感じがします、これが負帰還回路の怪です。細かくはおいおい書きたいと思いますが、まずは負帰還の基本的な働きを書けるだけ書きます。

一般的な負帰還の説明を書いてみます。利得A倍のアンプに負帰還率βの負帰還をかけてみます。

負帰還の図

上図のように入力Viの電圧に出力のVoをβ倍した電圧が反転されて入力側に戻されますので、アンプの入力電圧はVi-βVoという合成電圧になり、それがA倍されたものが出力のVoの電圧になるということです。最終的な利得αは上の式を変形してα=Vo/Vi=A/(1+βA)となります。自分で変形してみてね。このときのAを裸利得と言います(Open loop gainと言うこともあります、その場合αはClosed loop gainになります)。面白いのはもし裸利得Aが1より十分に大きければ、αは限りなく1/βに近づくということです。これは上のαの式にA=1000程度を入れてみるとわかります。βはR2/(R1+R2)ですから最終利得αは(R1+R2)/R2になるということです。なんとこれまた簡単な式になってしまったことでしょう(Aが十分大きい時ですけど)。

イメージとしては例えば1000倍のアンプに1/10の負帰還をかける場合、反転された電圧は出力をどんどん押し下げていきますが、出力が10倍になったところでその1/10の反転電圧は1倍となって出力を押し下げることができなくなる・・・という説明ではなんかおかしいですね。これだと入力とちょうど同じ倍率の反転電圧が合成されて出力が0になるような感じになってしまいますが、そう考えると訳が分からなくなります。これが負帰還の難しいところで、そもそもの入力はアンプで1000倍になっていますから、その1000倍を押し下げることはできても元々の入力を消し去ることはできないと考えるしかないかなと思います。とにかくそうなるのです、そういう現実が目の前にあるのです。深く考えるのはやめて次行きましょう。

でもいきなり1000倍のアンプは素人にはまだ早いでしょう。まず今までの無帰還アンプを5倍程度の倍率に上げて、それに軽く負帰還をかけて最終利得2倍の負帰還アンプを作ってみましょうか。この場合、裸利得が5倍なので全然大きくないので、最終利得は1/βにはなりません。上の式に入れて計算するとβ=3/10になります。
じゃ実際の回路ではどうするかですが、下図のように、2か所の出力を取り出す部分があります。簡単に言うと出力のコンデンサの手前と向こうです。手前はまだ直流成分がありますが、向こうでは交流成分のみです。

3石アンプ3-1直流成分がある信号を戻せばDC帰還になり、交流成分のみならAC帰還というようです。で、簡単そうなAC帰還の回路を作ってみました。反転した信号を戻すところはTr1のベース側しかありません。エミッタ側に戻すときは反転出力ではなく非反転の同相出力を戻さないといけません。これは後でまた説明します。コレクタ側にも戻せません、これは出力側ですからもはや手遅れの状態です(すでに増幅されている)。

 

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