増幅率(反転増幅の説明も少し)
ここでこのトランジスタ回路の増幅率(倍率とか利得などともいう)を考えてみましょう。増幅率とは出力電圧の変化分と入力電圧の変化分の比です。例えば入力が1v変化したときに、出力が3v変化すれば、増幅率は3倍です。ベースに入力する電圧はそのままエミッタに0.6下がって出てきます。ですからベース入力の変化分とエミッタ抵抗にかかる電圧の変化分は同じです。それで電流が変化して、その変化した電流がコレクタを流れて電源電圧から電圧降下を起こして、それを出力として拾ってきます。
実際に計算してみましょう、それほど難しい計算ではありません。入力電圧がVvから+0.1v変化したとします、Reに流れる電流は(V-0.6)/Reから(V+0.1-0.6)/Reになります。するとRcでの電圧降下は抵抗x電流なので(Rc)x(V-0.6)/Reから(Rc)x(V+0.1-0.6)/Reに変化することになり、その変化分はというとこの引き算になり結果は‐0.1xRc/Reになります。ではその変化分の倍率はもともとの変化分が0.1vなのでこれで割るとRc/Reになります。
ということで、感性でエミッタ接地増幅回路の倍率はRc/Reとなることを理解して下さい。倍率の計算は結果的にはとっても簡単な式に収束します。コレクタ抵抗割るエミッタ抵抗なのです。これもちょっと驚きですよね。計算の過程を覚える必要はないですが、とにかくRc/Reになることを感性で理解できれば良いです。
トランジスタの基礎のところでhFEの話をしましたが、結局hFEは全く分からなくても増幅率はちゃんと計算できるということになります。ところで+0.1v増えた信号が‐0.1xRc/Reになったこと、つまり符号が変わってしまったことに気付きましたか?これは意外と重要な部分で、実はエミッタ接地回路で増幅すると符号が逆になってしまいます、波形が逆になるということです。波形が逆になったところで聞こえる音は一緒ですが、実は後でお話しする負帰還回路でちょっと重要な部分になります。が、とにかくここではエミッタ接地増幅ではベースから入った信号分は電源からRcを通って電圧降下した分を拾うことになるので符号が反対になる反転増幅回路になることを覚えておいてください。